2016年02月15日

夕張市の奇蹟


 非常に久しぶりの投稿となります、、、
 戦略研は去年も2か月に1回コンスタントに開催し、当方も参加していましたが、その前後に仕事をしていることが多く、多忙な日々が続いていたため、本ブログにアップできない日々が続いていました、、、
 実は昨年某ベンチャー企業に転職し、事業を軌道に乗せるべく邁進していたため、この1年は殆ど時間がありませんでした。

 今年最初の戦略研は南日本ヘルスリサーチラボ代表の森田医師にお越し頂き、北海道の夕張市で起きた「医療をめぐる奇蹟」についてお話し頂きました。
 森田医師は財政破綻後の夕張市立診療所の元所長で、破綻により医療崩壊が起きると思われた夕張市に敢えて自ら飛び込み、地域医療を支えた方です。
 事前にTEDで予習していましたが、直接お話を聞くことで、改めて夕張市で起きたことの重要性やポイントを理解することができました。
 以下に概要を記載します。

・財政破綻により、夕張市の病床数は9割削減された(191床→17床)
・それにもかかわらず、医療崩壊と呼ばれる事態には陥っておらず、むしろ高齢者はいきいきと生活し、最期は老衰で人生を全うする人が増えた。また、一人当り医療費も減少した。
・その背景には@きずな貯金、A市民の意識改革、B生活を支える医療、の3点がある。
 ↓
@きずな貯金
:住民の方々がこれまで地元のネットワークを維持し、地域できずなを大事にしてきた(蓄積してきた)ため、助け合いの仕組みができており、独居でも安心して生活できる基盤ができていた。(地域の皆が見守っているから認知症の高齢者も独居が可能。孤独は寿命に悪影響を与えるが、地域の繋がりがあるため、孤独を感じない)

A市民の意識改革
:予防医療に対する意識の向上があった。これまでは「病気になったら医療(病院)がある」という思いで食生活等特に気にすることはなかったが、「病気にならないように日ごろから食事・運動に気を付ける。口腔ケアも行う(高齢者が肺炎になる要因は口の中のばい菌が原因で、それを防ぐためには口腔ケアが必要)」と考えるようになった。

B生活を支える医療
:財政破綻後、24時間の往診対応を約束する在宅療養支援診療所や、同じく24時間対応を約束する訪問看護ステーションができた。また、薬剤師の在宅指導も始まり、歯科医や歯科衛生士による訪問歯科診療(含む口腔ケア)も行われるようになった。これにより病院に行かずに在宅で医療サービスを受けられる体制となった。

 ざっくりですが以上です。
 なお、意識改革という点では上記の予防医療の意識のみでなく、「自分の人生最期の迎え方」という哲学的な点についても変化があったようです。高度な医療や、胃瘻等の特殊な処置により延命をしたいと思う人が減り、例えば病状が悪くなったとき、ちょっとしたことでは救急車を呼ばず、訪問看護師や医師を自宅に呼ぶようになったとのことです。救急車を呼べばそのまま入院となって帰れない可能性があるためです。その結果、救急車の出動数も減り、自宅で最期を迎える人が増えた様です。また、死因についても上位3疾患(癌・心疾患・肺炎)が減り、「老衰」が増えたとのことです。老衰というのは自然死という状態であり、病気ではないため、医師としては説明が難しく、それを家族に受け入れてもらうためには医師と患者・家族間での信頼関係が必要なため、簡単ではない様ですが、夕張市ではその比率が急激に伸びています(平成11年から18年までは1%前後だったのが、平成19年以上右肩上がりに伸びており、平成24年には14%に上昇)

 という訳で、いち早く高齢化を迎え、更に財政破綻まで経験をした夕張市の事例から学ぶことは非常に多くあると感じました。
 政府は医療費削減のため、現在病床数の減少を進めており、それをサポートする仕組みとして、夕張市のような在宅医療や訪問看護の充実が求められていると思います。また、医療を受ける住民側の意識として、何でも良いから治してほしいという意識ではなく、普段から健康の維持に努め、医療についての知識も積極的に吸収し、そして最期は夕張市民の様に「ある程度の年齢になったらいずれ医療では解決できない問題がやってくる、それが天命だ」というぐらいの気持ちで死を迎えるというということが必要なのではと思います。

 財政問題・高齢化等、何かと暗い気持ちになる話題が多いですが、地域コミュニティを維持し、いきいきと生活をしている夕張市の高齢者の方々を想像すると、今後日本として向かうべき方向性というのが見えてくるように思いました。

 詳細につきご興味のあるかたは森田医師の著書「破綻からの奇蹟〜いま夕張市民から学ぶこと〜」(渕上印刷)もご参照下さい。http://www.mnhrl.com/
posted by TK at 01:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする